鍵子

本日夕方にバイトを終え、

寒い中20分ほど歩いて帰って来た部屋の前で、僕は愕然としました。

いつも入れているはずのジーンズの左ポケットに自宅の鍵が入っていない。

なんてこった。

入れないじゃないかファッキン。

長々寒い中を歩いて帰ってきて、やっと家についた疲れたもう速攻で布団にくるまろう寝ようそうしよう、と思っていたが故の、巨大で強大な衝撃。

試しにドアノブを回してみる。

うん、閉め忘れているなんてことは無い。

鍵を持っていなくて開かないとわかると、

急に行く手を阻む堅牢な鉄の壁なんだと再認識させられる。

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でもまぁまだなんとかなる。

我が家の欠陥ともいえる構造のおかげで、

玄関横の窓から頑張って手を突っ込めば内側の鍵をあける事が出来るのです!

超欠陥!しかし今はそれが有難い!

そのまま窓に目をやる。

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閉まっている!

ならばと窓に手をかけてみる。

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誰がどう見たって閉まっている!

鍵まできっちりとかかっている!!

…そうだ、今日僕は、家を出るに際し、

防犯意識をしっかりしよう、なんて、柄にもない事を考えて、

内側から、窓の鍵を、しっかりと、かけたんだった、そうだった…

あほか!こんな時に限って!今後防犯なんてしてやるものか!

とまぁそんな風に怒ってみたところで何一つとして意味は無いので、

どっかのメロスさんとやらと違って僕はただただ冷静さを保ち続けるのです。

窓割るか。

既に全くもって冷静な判断ではない。

頭を冷やしてふと見てみると玄関を挟んで反対側の窓が開いているじゃないか!

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これは風呂場の窓である。

結局のところ防犯意識も中途半端だアホか自分は。

しかし、風呂場の窓が空いていたところで、

手を突っ込んでも風呂場から玄関まで手が届くわけでもなし、

写真の通り鉄の横棒が邪魔になっていて、

10センチ強くらいしか開かないので入ることもできない。

意味ねぇ。

いや、この鉄の棒を外せばガバッと開くから入れるんじゃない?

でもそもそも外れるのか?

引っ張ってみる。当然外れない。

壁を足で蹴りながら引っ張ってみる。全然外れない。

両足を壁について柵にぶら下がってみる。微動だにしない。

ん!良い柵だ!防犯効果が期待できます!

じゃあもうどうすりゃいいんだyo!!困っちゃったyo!!

などともう万策尽きて苦し紛れにHip-Hopperになるくらいしかすることが無くなった時、自分の中に一つの小さな小さな疑問が生まれました。

じゃあこの鉄のぼっこ(棒)どうやって付けたの?と。

今度は探る。鉄のぼっこを弄る。力任せに引っ張ったりせず、凝視する。

付け根。

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ん~、付け根。

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ん~?んん?うん?

これねじ式じゃね?

クルクルクルクル

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よっしゃぁああああああ!!!

きたぁああああああああ!!!

とれたぁあああああああ!!!

ねじ式のカバーになっていて、それを外したら中に四本のネジがッ!!

これ外せば窓がガバッと開いて風呂場から進入できるッ!!

したらばすぐにでも布団で眠れるッ!!

さぁどうする!何で開ける!?

ドライバーなんかは持っていない!

ポケットを探る!小銭ッ!!

一円玉でイケるかッ!?

ダメだ上手く回らない!

じゃあ他に何かないかッ!?

鞄をあさる!ヘアピン発見ッ!

イケるかッ!?ダメだやっぱり上手く回らないッ!

くそ!くそ!ゴールはすぐそこまで迫っているというのにッ!!

他に何か使えそうなものはないかッ!?

ジャケットのポケットを探るッ!

右のポケットには何も入っていないッ!

ダメだ何も無いのかッ!?

左のポケットに何かは入っているッ!!

おお!サイズ的にちょうどいいかもしれないッ!!

これなら上手くネジを回せるかも知れないッ!!

試してみようッ!!よっしゃッ!!

ん!ん!

ん。

ん?

…よっしゃ?

…ん?

…えーと。

…こちらは…?

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どう見ても自宅の鍵です本当にありがとうございました。