展転
お晩で御座います。
無意識、というものはとても大切なもので御座います。
皆々様、普段何気なく行っている動作を、
一度意識してしまうと上手くできなくなってしまう、
なんていう経験をしたことはありませんでしょうか。
ふと、いつもどんな風に歩いていたかなと考えた瞬間に、
どうもよくわからなくなって歩き方がぎこちなくなってしまったり、
手の振り方がわからなくなって妙に胡散臭くなってしまったり。
ふと、まばたきを意識してしまったばっかりに、
まばたきのタイミングがよくわからなくなったり、
定期的に視界を遮ってくる瞼を鬱陶しく感じてしまったり。
ふと、呼吸を意識してしまったばっかりに、
普段気にしてもいないはずなのに自発的にしようとしないと、
上手く呼吸ができなくなって息苦しくなってしまったり。
そんな経験はないでしょうか。
僕は小さい頃に、といっても小学五年生くらいだったと思いますが、
自分の無意識的な活動も含むあらゆる行動、
一挙手一投足全てを意識しながら生活する、
という遊びを一人でしていた時期がありました。
遊びというか当時の彼は真剣に、
カオス理論的なな必然の連鎖から外れようとしていたのであります。
まぁ無理なんだけども。
そんな昔の遊びのおかげで、
今は何通りもの歩き方で歩くことが出来たり、
意識すればまったくまばたきをしなくても良かったり、
鳥肌を自由に立てられたり、咳を自由に出来たり、
心臓のリズムが勝手に乱れたりと、
イマイチ意味のわからない能力を数多く手に入れることができました。
まぁまた見事に脱線しているのです。
この無意識下にあるべきものたちを、
意識してしまったせいで眠れなくなる、
という経験が自分には今も昔も本当に良くあります。
なので安眠したい方はこんな事はしない方が良いと思います。
先日も眠ろうと横になって目を閉じていた時に、
あれ?寝るときって閉じてる眼ってどうしてるっけ?
という事が気になって気になって、
クルクル動かしているうちに全然眠れなくなり、
さらに、口の中で舌ってどんな風に収納していたっけ?
ということが気になり始めたからもう大変。
引っ込めてるかな?前に出してるかな?
力抜いてるかな?少しは入ってるかな?
先っぽを歯にあててたっけ?あててないっけ?
そもそも歯って閉じてるっけ?少し空いてたっけ?
噛んでるんだっけ?上あごにあてるんだっけ?
という具合になってしまいさらに眠れなくなります。
さらには、あれ?唾液でてるな。
唾液って普段どうしてるっけ?
というかそもそも普段からこんなに出るんだっけ?
あれ?無視すんのかな?飲むのかな?普段飲むっけ?
あれ?寝るとき手ってどうしてるんだっけ?
あれ?あれ?何処に置いても違和感違和感。
指は?指はこんなにくっついてていいの?なんか違和感。
手は開いてるんだっけ?力抜いて閉じてるんだっけ?
くっついている足の指にも違和感。グーパーグーパー。
その間も変わらず眼はあてもなくクルクルクルクル。
同じく舌も所在なげにウネウネウネウネ。
もう眠れない。眠れるはずがない。
あ、鳥が啼いている。日が昇っている。
そんな感じの夜をよく過ごしている。ああ。