鏡面
今日また変な夢を見ました。
たぶん夢。でも本当のところどうかは定かではありません。
何時くらいかな。
まだ日は上がっていないけど、そろそろ上がるだろうくらいの時間。
薄暗い時間帯。夢うつつの状態。
突然、天井の方から声がしました。
「おい」
え?とびっくりしながら目を開けると、
蛙のような姿勢で、逆さまに天井にくっついている自分がいました。
逆さまなので天井で伏せている格好なのですが、
首が180度捻じれていて、顔はこっちを向いています。
「おい」
また言いました。この時変な声だなと思いました。
寝ぼけながら、これは自分と同じ声なのかな、と思いました。
自分に聞こえている声と、他人に聞こえている声は違うから。
不思議と恐怖感がなかったのは夢だったからなのか、
何なのかはよくわかりません。少しは怖かったようにも思います。
以下、会話。覚えている範囲で。
自=自分。 逆=天井の人。
自「何?誰?」
逆「お、やっと起きた。てか変な声だね、君」
自「誰?てか君に言われたくないよ。たぶん声一緒でしょ」
逆「ま、そんなこといいや。変わってよ。調度キリもいいことだし」
自「何?どゆこと?」
逆「もう君は十分生きたでしょ。そろそろ交代してよ」
自「意味がわからん。まず誰かって質問に答えろ」
逆「自分の名前くらいわかるだろ。しかも毎日会ってるし」
自「何処で?」
逆「気づかないかな、この顔見て。鏡で見てるでしょ」
たしかに、同じ顔なのですが、
鏡と同じように向かい合わせになっている。
自「鏡から出てきたの?」
逆「当たり前でしょ。格好見ればわかるでしょ。逆さまなんだし」
自「いや、全くわからないけど。まずそんなことできるわけないでしょ」
逆「やったことある?本気で試したことあんの?」
自「いや、無いけど」
逆「じゃ、わかんないしょ。なにより現に出て来てんじゃん」
自「はいはい、そうだね」
逆「そんなこといいから早く変わって」
自「よくわかんないけど、やだ」
逆「なんでわからないのに断るかな。変わってよ」
自「義務は?」
逆「ないけど…」
自「じゃやだ」
逆「ヤな人間だね、君」
自「自分で知ってることでしょ」
逆「まあね」
自「万が一交代したらどうなんの?」
逆「鏡の中へ」
自「で?どうなんの?」
逆「教えない」
自「決まり?教えられないの?」
逆「んん、教えないの」
自「ヤな人間だね。ん?一応人間?」
逆「微妙。一応まだね。だから変わってって」
自「よくわからんけどなおさら嫌になったよ」
たしかこんな内容の会話をしました。
その後外が明るみだし、鳥の鳴き声がし始めたくらいに、
逆「やべ、帰んなきゃ。君がグズグズごねるからだよ」
自「ん?時間なんかまずいの?」
逆「当たり前でしょ。かわたれ時が終わっちゃうよ」
自「へぇ、残念だったね。じゃあとりあえずとっとと帰りなよ」
逆「一言一言がイライラする人間だね、君」
そう言いながら、
天井をシャカシャカと洗面台のほうへ移動して行きました。
最後に鏡のほうから、
「また来るよ」
と聞こえました。
そのまま眠りに落ち、目が覚めたのは10時半くらい。
なにも変わらない自分の部屋。
夢かうつつか。
今晩また来たらどうしよう。
今考えると意外と怖い気がしてきました。