妖怪

東京から帰ってきてから生き直そうと思い至ってなんとなく小まめに書き始めているこの日記。地味に三日も連続で更新してしまったので、三日坊主にならないためには少なくとも今日も更新しなくてはならないなぁとキーボードを叩いている次第である。

ちょっと前まで割りと元気に生きていたのですが、ここ数日ウルトラ陰鬱としている。元来此れが見慣れた自分なので違和感は無いんだけどそうなってくると書くことが無い。陰鬱とした人間の文章なんてみたくないだろうな、と思ってから気付く、特に誰も俺の文章なんて求めてないわな、と。もし求めてる人がいるならその人は陰鬱なのでもいいはずだわ。そんな感じ。

まぁそれでもあまりに陰鬱ではいけないから何を書こうかなぁと考えてみたところ、そういえばこないだ書くと言っていた中の一つをまだ書いていないなと思い当たりました。減酒も書いたし、記憶の話も書いたし、車の中でのゲームも書いた。エライ。珍しく有限実行。今一人酒した後だから減酒守ってないけどね!

前に書くと宣言していまだに書いていないのは妖怪の話である。

なので今日はそれについて書こう。その名も妖怪「物隠し」。

様々な妖怪がその生活空間を破壊されて絶滅してきた中で、現代の生活に適応し生存を続けられている数少ない妖怪の中の一つである。妖怪「隠し」。

リモコンを頻繁に隠すと考えられていることから「リモコン隠し」という名でも知られているが、実際にはリモコンを隠された際に気付きやすいというだけで、彼らは何もリモコンのみを隠すというわけではない。

僕は昔から彼らに好かれているようで、周囲のものが頻繁になくなり、全くわけのわからない場所から出現するということが良くある。自分が無意識の行動として行っているのも当然あるだろうし、酔ってやった結果というのもいくらでもあろうだろう。しかし!そのどれでも説明できない事例と言うのがたくさんあり、さらに最近それが明らかに増えてきているのである。怖い。

冗談だし、冗談だと思って書いているんだけど正直たまに本当に怖いことがある。

大学時代、近所にラーメン屋があった。そのラーメン屋は髪が長い人への気遣いとして、ヘアゴムが持ち帰り自由として無料で置かれていた。僕は当時髪が長かったので、それを頻繁に使用し、適当に前髪を縛ったまま帰宅していたものである。

そうすると、家にヘアゴムが溜まる。基本的にはそのラーメン屋でしか使わず、そのままつけて帰宅し、シャワーを浴びる前に洗面台の上に置いてそれ以降使わないので、洗面台の上に溜まるのだ。何かの拍子に髪が邪魔だなと思ったら洗面台の上から取って使うことはあったが、基本的には使わず、増えていくだけ。さらに、洗面台上部の平らな部分は、一般的な日本人の身長よりも高いところにあるのでそこは視認することができず、おそらく家主である僕しかそこにヘアゴムがあることは知らないはずであった。

そんなある日、ふとした時にヘアゴムを使おうと洗面台の上に手を伸ばした僕は、そこに一つもヘアゴムが無いことに気付く。あれ?細かく手で探る。しかし無い。足元を見ても落ちていない。間違いなく昨日までは会ったはずなのに。背伸びをして目で確認するも、そこはただ平らなだけで何も無かった。少なくとも10個はあったであろう色とりどりのカラフルなヘアゴムが、突然消失したのである。かなり不気味であったが、どうすることも出来ないので無理やりなんとなく納得してこのことは忘れた。

そんな数日後、僕は思いがけないところから大量にヘアゴムを発見したのである。当時住んでいた部屋の、寝室ではない多胎の部屋の、せまい畳と畳の隙間に、色とりどりのカラフルなヘアゴムはあった。たまたま腕立て伏せをしていた時にそれを見つけた衝撃。それらは上から詰め込めるような形ではなく、一旦畳を外して詰めながら入れなおすか、何かとても細い棒で押し込まれたような形で奥のほうで丸まっていた。蛍光色したピンクや黄色。ちょっとほんとに泣きそうになった。さらにその後畳を全部剥がしたら畳の部屋の床の中央に細かく漢字が書かれていてちょっと漏らしそうになったのはまた別のお話。

こんな様なことが昔からよくある。

そして最近もまたあった。というか最近こういうことがあまりにも頻発するので、指差し確認をしたりするのに、確実にそれらは消滅し、そしてまた出現する。こういう話の面倒なこところは人に話してもその理解が得られないことだ。「勘違いでしょ?」で話は終了してしまう。いや、実際に勘違いである可能性もたぶんにあるし、実際そうだろうなとも思っている自分はいる。でも、そうではないということを確かめたくて、けっこう確認をしているのに、そうなってくると困惑することしか出来ない。もし妖怪が実在するなら仲良くしたいものだ。

怖い夢を見た話などと同様に、自分がどのように感じいていたかと言うのは、おそらく言葉では語りつくせず、それを聞き手に伝える手段は無い。日常生活をしていてそんなことはいくらでもあると思う。伝わらないことは前提だから、言葉尽くして頑張ってみるんだけど、それを聞こうとせずわかっているという前提で聞かれるとどうしようもなくて心のそこからがっかりする。何の話だっけ、脱線しました。

僕はこないだ東京に言っている間、爪を切る機会がなく、とても爪がきりたかった。というのも、僕は自分の手の爪に少しでも白い部分があるの嫌という変な人間なのに、東京へ行った際爪切りを忘れてけっこうイライラしていたのである。ほんでもって札幌へ戻ってきて、すぐコンビニで爪切りを買い、帰宅し、机の上に爪切りを置き、なんだかんだしてから、さて爪を切ろうと思ったら、なんと爪きりが机の上にないではないか。あれ?あれあれあれ?間違いなく置いた。そして間違いなく爪きりが無い。あれあれあれ?指差し確認。今、目の前の机の上に、爪切りは、無い。よく適当に探して、さっき探したはずの場所から見つかるということがあるので、今はちょいちょい確認をしている。この時も間違いなく、した。机の上に指切りは無い。となると、自分が帰宅してから流れでどこかへ置いてしまったのだろうと、玄関から部屋まで隈なく調べる。トイレも調べ、冷蔵庫の中も調べ、また部屋に戻って調べる。無い。ないないない。

僕は必要なものが見当たらず探すという行為が本当に嫌いで、一瞬にしてストレスが振り切るほどにまで溜まる。それを我慢しながら探す。絶対机に置いたはずなのに!と思いながら探す。無い。ちなみにこの時僕は酔っていない。

そうやってイライライライラして結局無くて、ストレスの限界を迎えたからもう明日買ってくれば良いやと諦めてベッドに腰掛けたところで、爪切りを見つける。さっき死ぬほど確認した机のど真ん中に置かれているのを。そんなわけあるか?指差し確認までして、キーボードもズラシテ持ち上げて確認したのに、キーボードの手前の見やすいところに爪きりが鎮座してらっしゃる。なにこれ?ちょっと鳥肌。っていうかけっこう鳥肌。気持ち悪。自分の目が節穴なんだと必死に言い聞かせるしかない。

これだけじゃない。この爪きり事件とほぼ同じ頃、スリッパも無くなった。

自分専用のスリッパ。来客用のスリッパもあるし、基本的には僕が玄関から部屋まで履き、部屋から玄関まで履くスリッパなので、僕が帰宅したら玄関にあるはずなのである。しかし、無い。まぁ僕は時々部屋まで履いて行って急いで外出する時に部屋の前に置きっぱなしで家を出たり、風呂の前に放置したままにしているので今回もそんな感じかーと探してみたけど無い。自分の部屋の前にも、トイレにも、脱衣所にもそれ以外にも何処にも無い。酔って捨てた?もしくは逃げた?とかそんなくだらないことを考えながら飲み物を取りに冷蔵庫を行こうと自分の部屋のドアを開けたら、僕のスリッパが部屋の前に綺麗に並んで置かれていた。鳥肌。スーパー鳥肌。この時家には僕しか居ない。まじ泣きそう。むしろちょっと鳴いた。コケッコー。

だからなんだというんじゃない。ただこんなことがあったさー聞いてーっていう話。

酔っ払いの勘違いだろ酒やめろ間抜け!って思われても別に良いです。考えてることが一切に人に伝わらないと諦めました。そんなでっかい話じゃないけどね、これは。とりあえず僕の周りからはめっちゃ物がなくなって戻ってくる。時々捨てたはずなのに部屋にあるものとかあるし。まぁどれもこれも特に害はないし不可思議で楽しいから良いんだけどね。

ただ外出前に鍵と携帯と財布を隠すのだけは辞めていただきたい。

なんなら俺を隠してくれ。そろそろお隠れになりたいのですよ、僕は。

そんなこんなでおやすみなんし。